造園施工

樹勢回復のための土壌環境改善作業

皆さまこんにちは。

松下造園風景舎の松下です。

今回は、先日植栽作業でお伺いしたお客さまに、

既存の樹木であるソヨゴの木が、

「すす病」になっていると、相談を受けました。

「すす病」というのは、葉っぱが黒ずんだ状態になる樹木の病気のことです。

 

原因としては、この写真でも確認できますが、

葉の元の枝にカイガラムシという、

赤紫色の甲羅のような2ミリほどの虫が付着し、

その虫の排せつ物によって葉や枝に黒いカビが付着し、

黒ずんで煤(すす)を被ったように見えるため、そのように呼ばれます。

 

カイガラムシ自体は、枝に付着することで

その樹木の汁を吸って生き延びます。

樹木としては汁を吸われていくため弱っていくことも考えられます。

 

通常このすす病の原因とされるカイガラムシが枝に付着していると、

殺虫剤を散布したり、人力で一つ一つの虫を手でこすり落としたりして、

対応するのが一般的です。

 

ただ、私達としては、極力、殺虫剤を撒いたり、

対処的には対応することはしないように考えていますので、

今回も虫自体は軽く手でこすり落とす程度にし、

樹木自体を元気にし、抵抗力を上げることで、

虫が寄り付けない状態に持っていきたいと考えました。

 

この考え方が100%正しいということではないと思いますが、

私の経験的な考え方では、

樹木に一般的に害虫と呼ばれる虫が付くのは、

樹木自体の抵抗力が弱まっているから、

または、樹木自身が不利益を被る虫を、

誘因する物質を自ら出してしまっているから、

だと考えています。

 

ではなぜ、そのような状態に陥ってしまっているのか。

それを考えたときに思い当たるのが、樹木の根の状態。

もしくはその根の周りにある土の状態です。

 

樹木の地下部である根っこでも、

養分や水分を吸うと言われているのは、

「細根(さいこん)」と呼ばれる、

細いひげ根のような根です。

 

元気な木にはこの細根が旺盛に発達し、

逆に樹木が元気を失ってくると、この細根が土の中で退化、減っていき、

枯れる寸前の木の根には細根が少なく、

掘り上げて比較すると一目瞭然です。

 

樹木が枯れたり、弱ったりするのは、

確実に特定できる原因と、複雑に入り組んで複合的に絡みあい、

これだと一つに特定できないものがあるのは事実ですが、

その要因として大きなウエイトを占めているのが、

根の状態や、根の周りの微生物環境です。

 

地上部の気温の上下、湿度、日照、雨の多さなどの気候条件や、

根っこの細根の状態、土の中の微生物・菌類の状態。

 

これらに依るところが大きいので、

今回は弱ったソヨゴの木の周りの、土の状態を良くするための施工を行いました。

 

土には表面の様子を見ると、湿気ていて自然と苔も多く、

土中の通水状態は良くなく、土中で停水、溜水しているように見えます。

原因として考えられるのは、ブロック擁壁のコンクリート基礎部分だと推測しました。

コンクリート基礎まわりの土は、コンクリート基礎により土留めされている状態です。

 

土は、「土の端にあたる部分」から水と空気が抜け出します。

よくある分かりやすい例は、「湧き水」であったり、

湧き水とも呼べない、「絞り水」のようなもの。

 

土を切り落とされた断崖になっている側面から、

水がしみ出していたり、土の水路(素掘りの溝)の底から水が湧いているのを

ご覧になられたことはないでしょうか。

素掘りの溝の底から水が湧きだしている様子(波紋がそうです)

 

土の末端である端の部分、ヘリの部分や、

溝底から水が湧きだしたり、しみ出したりします。

 

これは、土の中の水が、土の中の水路(水みち)を通って、

土から顔を出した状態です。

 

出口があれば、土の中の水は、上からの重力に押し出されて、

下の方の出口へと押し出されてきます。

 

その理屈で、コンクリート基礎際に溝を掘ることで、

コンクリートの土留に土中の水が堰き止められる前に、

土とコンクリートの間に、空間(ヘリの部分・断崖)を作ることができ、

本来そこへ抜け出たかった水が、土の中から外へしみ出せるようになります。

 

すると、出口へ向かって土中の水が動くようになり、

溝付近の土中の水が外へ向かって動きだすのです。

 

ということは、土とともに土中の詰まった空気も一緒に排出され、

水みちは土中でつながっているので、

土の表面の水の浸み込みが良くなっていきます。

 

(例えば、植木鉢に水をやると、鉢底から出てきます、

ということは、水みちが上から下まで繋がっているということで、

鉢底の排水が良くなると浸み込みが良くなるように、

鉢側面から水が抜けるのであれば、

鉢底の浸み込みが悪くとも、

鉢上部からの浸み込みは良くなるということです)

 

 

そうなることにより、土の中の水みちが再生されていき、

土表面の水みち(小さな穴)も開かれていくので、

目には見えないかもしれませんが、

土表面の小さな穴が開かれ、土中の詰まった空気も抜け出ていきます。

 

雨が降っては、土の中へと浸み込んでいき、

晴れた日には、土の中の表面に近い部分の水分とともに空気も吐き出される。

 

そうすることで土中に水分と空気を送り込んでは、

吐き出されてという循環が起こるようになります。

 

その「土の呼吸」状態を復活させることによって、

土の中の好気的な微生物環境(酸素を必要とする微生物)を豊かにし、

 

それにより土の中の小動物(ミミズ・ダンゴムシ・モグラなど)がやって来て、

それらの活動(動いたところに隙間ができて、穴やトンネル・水みちとなり、

さらに、彼らの食べかす・排せつ物が良い土となる) や、

 

微生物・菌類の活動により、

土の状態がだんだんと蘇ります。

 

今回は、このような仕組みで、

ソヨゴの木を元気にしようと試みました。

 

長くなりましたので、今日はここまでで終わります。

続きが気になる方は、また次回をご覧くださいませ。

ではでは

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