松下造園風景舎の松下です。
少し期間が空いてしまいましたが、久しぶりにコラムを書きたいと思います。
今回の記事のタイトルにあります、「住まいの環境としての植栽」
これは、松下造園風景舎が大切にしている、造園や植栽に対する考え方です。
何度か書いてお伝えしていますが、ただ木を植えたり、庭を造る、
ということは決して松下造園風景舎のスタイルではありません。
松下造園風景舎が木を植えたり、石を組んだり、石を並べたりして景色を作るのは、
お施主様(私たちにご依頼くださるお客様)の住環境を居心地が良く、
より良い住まいの環境として育てていくために、
木を植えたり石を組んだりするに過ぎないということです。
究極のところ、
造園ということ自体を、「お客様の住まいの環境をより良いものとするための手段」
と捉えているかもしれません。
もちろん、景色や造園の細部における、造園家、植木屋としてのこだわりはありますが、
最も優先すべきはそこではないと考えているので、
その場が快適な空間として醸成されていくためには、
施工時に何をしなくてはいけないのか、
どんな準備が必要で、どのように変化していくと予想されるのか、
そして数年後に、どのような世界観がそこに生まれているのか、
そのようなことを考え、設計、施工に取り組みます。
居心地が良い、住まいの外空間を創るということは、
私たちにとって造園における第一義ですが、
そこで生活されるお客様にとって居心地が良いだけでなく、
使い勝手が悪いものであってはならないので、
外からの視線、歩きやすさ、圧迫感、光の入り具合、視覚的な快適さなど、
様々なことに配慮しながら、机上では分かり得ないことを、
現場に立ちながら体感として感じ、フィードバックをえながら考えてデザインしていきます。
庭というものは、庭づくり完成時がピークではなく、
時と共に木々が育っていくように、庭という空間自体も同様に育っていきます。
それは、木々をはじめとするそこで暮らす生き物たちがまずそれに当たりますが、
土の中で生活する土壌微生物、菌相も樹木の根と共に育ち、変化していきます。
また庭の木が育つこと、土壌微生物が育つこと、鳥など様々な生き物が飛来し、
住処となることで庭全体の雰囲気も育ち、醸成されていきます。
住まいの環境としての庭は、
庭づくり完成時が「完成」ではなく、そこから始まります。
刻一刻と変化する、毎日の暮らしの環境を、
日々の暮らしの「楽しみ」としながら、
日々の生活の中にこんなに「豊かな時間」があったのかと、
お施主さまに思っていただけたら、造園家として本望です。
今日はこんなところで筆を置きたいと思います。