
毎日の生活空間、暮らしの場をデザインする「造園設計」は、設計者の考え方や感覚によって、居心地のよさや気持ちのよさが、大きく左右される仕事だと感じています。
だからこそ、庭づくりや空間づくりをお任せいただく前に、「どんな人が、どんな思いで設計しているのか知りたい」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
少し長くなりますが、ここでは私自身についてお話しさせてください。
子どもの頃から、図画工作が好きでした。
小学生の授業で「箱の中身は秘密」というテーマがあり、多くの子が現実の風景や行事を表現する中、私は箱の中に宇宙空間をつくり、宇宙人たちが遊んでいる、取り留めのない世界を作っていました。
今振り返ると、頭の中にあるイメージを形にし、自分なりの世界観を空間として表現することが、当時から性に合っていたのだと思います。

高校卒業後、進路として一度は「小学校の先生」を目指しました。
建築家という選択肢も頭に浮かびましたが、数学が苦手だった私は文系を選び、教育学部へ進学しました。
大学では順調に単位を取得しながら、家庭教師やキャンプカウンセラーとして実際の子どもたちと関わる機会を多く持ちました。
その中で、子どもたちの現実と、教育現場で求められる指導や枠組みとの間に、自分の中でどうしても拭えない違和感を覚えるようになります。
理想として思い描いていた教師像は、現実と向き合う中で少しずつ形を失い、やがて自分の進む道が見えなくなっていきました。
悩む中で一度立ち止まり、地元に戻って半年ほど、さまざまな場所を訪れ、調べ、考える時間を持ちました。
そのときに出会ったのが、「街の景色をデザインする仕事がある」という考え方でした。
街に緑があり、人が行き交い、自然と足取りがゆるむような場所がある。その情景が、強く心に浮かびました。
「こんな空間を、自分の手でつくることができたら」
明確なきっかけがあったわけではありませんが、そのイメージが、私を次の一歩へと引っ張ってくれました。

造園の専門学校へ進学し、樹木や造園の基礎を実習を通して学びました。
進学前に見学に訪れた学校で、先生からかけられた言葉、「造園設計は、現場を知らずに描くと絵に描いた餅になる」は、今も心に残っています。
設計を志しながらも、まずは現場を知る必要があると考え、京都の造園会社に職人として就職しました。
職人として過ごした8年間は、技術だけでなく、業界のこと、自分が本当に目指したい方向性を考える時間でもありました。
その中で、自分が思い描いてきた風景や空間の感覚が、ある造園家のつくる空間と近しいことに気づきます。
本や文章を通してその仕事に触れるうち、「この人のもとで学びたい」という思いが強くなり、京都での8年目を迎える頃、千葉にある高田造園設計事務所へ弟子入りすることを決意しました。

高田造園設計事務所での4年間は、驚きと発見の連続でした。
空間構成の考え方、視覚的な美しさだけでなく、その場に立ったときに身体で感じる心地よさ。
言葉にしづらいその感覚は、美しい自然の風景に出会ったとき、「はぁ…」と思わず息が漏れる、あの感覚に近いものかもしれません。
自然との向き合い方、土地との関係性、美しさとは何か。多くのことを学ばせていただきました。
退社後、関西へ戻り、現在は兵庫県丹波篠山市を拠点に、近隣地域から京阪神エリアまで庭づくりや外構、植栽設計のご依頼をいただいています。
個人住宅を中心に、宿泊施設やクリニックなど、人が集う場のご相談も増えてきました。
私がこの仕事を目指した原点は、「人が行き交う場所を、緑のある、気持ちのよい空間にしたい」という想いです。
これからは、より多くの人が利用する場、 街にひらかれた外空間や植栽風景にも関わりながら、居心地のよい風景を一つずつ増やしていきたいと考えています。
また、将来的には、小さな住宅地全体を一つの風景として設計し、木立の中に家々が点在するような、ゆったりとした暮らしの場をつくることも、目標の一つです。
木漏れ日や、静かに流れる時間の中で、自然とともに暮らすことに豊かさを感じられる方が一人でも増えるよう、造園家として、丁寧に仕事を重ねていきたいと思っています。