松下造園風景舎が理想とするお庭は、その場にいるだけで心が満たされ、「庭に居れば、わざわざ外出しなくともよい」と思える、居心地の良い空間です。
そのような空間を作るには、庭のみに焦点をあてるのではなく、生活空間と植栽が共存、それぞれが機能する空間としてデザインするべきです。

造園業界には、空間建物が一体となって美しく調和する様を表す「庭屋一如」という言葉がありますが、松下造園風景舎も、土地の形状や建物の向き、玄関、窓の配置、それらを結ぶ導線、お庭の外の遠景などを考慮した総合的なプランニングをさせていただきます。

松下造園風景舎では、お庭を「豊かで肥沃な土地」へと改善する工程を大切しています。土の中の水と空気の流れを動かすことで、空気を必要とする微生物が活発に活動し、落ち葉や枯草などの分解が促され、栄養価の高い腐植が堆積していきます。
これは、多様な生命の環境を育むための重要な過程です。

地形に高いところと低いところを作って、重力で低いところから地中の水がしみ出ることで、土の中の水の動きが生まれます。土の中に雨水がしみ込む水みちが開かれると、水はけが良くなり、スポンジのように土も柔らかくなっていきます。
また、地面の水はけ・水のしみ込みが良くなると、その逆も然りで、地面からの水の蒸発、空気の発散が促されます。

これにより、土は自然な形で「呼吸」をするように、地下と地上を、水と空気が行き来するようになるのです。豊かで肥沃な土地に植えられた木々や草花は、いきいきと成長し、小鳥や昆虫を育む場となります。少々神秘的な表現かもしれませんが、土が「呼吸」する豊かで肥沃な土地を実現することで、「住まう人にとって、その場にいるだけで心が弾むような、土や生命の息吹を感じることができる庭」を目指しています。

「雑木の庭」のコンセプトである里山の美しい景色を自宅の庭で再現するためには、樹木を単に等間隔に配置するのではなく、「寄せ植え」という手法が有効です。
寄せ植えでは、一つのエリアに、8～10本程度の樹木を寄せて植えます。
この際、低木、中木、高木といった異なる植生樹高を持つ木々を組み合わせることで、立体的な階層構造を形成します。

このような構造は、自然界の多様性と美しさを庭にもたらします。異なる高さの木々を、自然に倣って植えることで、庭に視覚的な興味を与え、層を持たせ、より魅力的な景観を生み出します。
また、異なる種類の草花と樹木を組み合わせることで、季節ごとに異なる自然の表情を楽しむことができます。春には新緑の中に花が咲き乱れ、夏には緑豊かな木陰と、穏やかな木漏れ日の中で過ごし、秋には紅葉の美しさを堪能し、冬には冬枯れの木々が静寂を感じさせます。

森の中に足を踏み入れると、心地よい涼しさを感じたことがあるかと思います。
この涼しさの秘密は、木々が土から水分を吸い上げ、それを蒸発させる「蒸散」という現象にあります。蒸散は、植物が水分を蒸発させる際に必要な熱（気化熱）を周囲の空気から奪う（吸収する）ため、その周辺の気温を下げる効果をもたらします。
特に暑い日には、植物は水分を積極的に吸い上げ、蒸散を行います。

蒸散によって放出される気化熱は、木々の周りの気温を下げ、一方、木のないところの温度は高くなり、温度差によって気圧の差が生じて、空気の流れが生まれ、風を発生させます。松下造園風景舎のお庭づくりは、木が持つ自然の原理を最大限に生かす配置をご提案します。

例えば、南側に樹木を植え、北側の窓から冷たい空気を取り入れ、その空気が家の中を通り抜けて南側に出ることで、涼しい風を生み出すことができます。
また、樹木による直射日光の遮断は、夏場の冷却効果に寄与し、冬場は葉を落とすことで、暖かい日差しを室内に取り入れることができます。これらの自然の恵みを活用することで、森の中で暮らすような快適な生活に近づけます。